●李登輝先生講演原稿8(完)
【「自我」排し高い次元に生きる】(2006/9/21) (題字は李登輝氏)
最後に、最近台湾で、「台湾民主化の遣」と言うDVDが出回っています。20年来の台湾の民主化の過程に於いて、私は与党国民党の指導者として、台湾の国民の声に耳を傾け、主流の民意を尊重し、それを改革の推進力として来ました。このDVDの中で台湾の民主化を進めた私に対して、「李登輝は一体何者や?」と問うていました。
それに対して台湾大学史学科の呉密察教授は、『李登輝氏は日本の大正世代に生まれ、徹底的に日本教育の薫陶を受け、忍耐、自制、秩序を重んじ、公の為に奮闘、努力する精神を身につけた人である』と返答しています。
この答に同意はしますが、日本的教育で、最も強調されている"実践躬行"が述べられていません。日本的教育の長所は、武士道精神に表現される実践にあると言えるでしょう。私も知ること、考えること以外に、実践する能力に全ての意義を与えています。
私にとって、人生は-回限りであり、来世はありませんから、一部の宗教が所謂「輪廻」を唱えるのも、私はそれを自己満足に過ぎない話だと思っています。
「意義ある生」をより肯定すべきだと思います。
「人間とはなんぞや」、または「自分とは誰だ」という哲学的問題から出発し、自己啓発へ発進すれば、人格及び思想の形づくりが完成できます。「自我」の死への理解を踏まえたうえで、初めて肯定的な意義を持つ「生」が生まれるのです。
実際に、人間は単に魂(心)と肉体から構成されています。けれども精神的な弱さは更に高い次元の存在を必要とするのです。総じて言えば、私達には全ての権限を有する神が必要です。と言っても、すぐに信仰を持つのも簡単ではありません。信仰への第一歩は、見えないから信じない、見えるから信じることでなく、ただ信じること、実残することです。純粋理性から実践理性へと、もっと高い次元に生きる価値を見つけ出すことが、人生の究極の目標です。従って、この日本的教育によって得られた結論は「私は誰だ」という問いについて、「私は私でない私」なのです。この答えによって、私は正しい人生の価値観を理解し、いろいろな問題へ直面する時にも、「自我」を排除して、客観的立場で正しい解決の方法を考えることができるようになりました。これが日本の教育を通して私に与えられた人生の結論でしょう。
これをもって私の講演を終わらせてもらいます。ありがとうございました。
おわり
コメント
李登輝さんご自身はご病気も快癒されお元気のようですね。来日取りやめも日本と台湾の政界の動向を考慮されたのではないかと思います。
管理人様の筋金入りの渡航歴は当然ですが、台湾の日本語世代の旧同胞と話しておりますと「国民年金」を差し上げねばならないような気になります。
私は30も半ばですが、日本の若い世代の台湾旅行者はとても嬉しいみたいですねぇ。ホント有難いことだと思います。
Posted by: tsubamerailstar | 2006年10月13日 01:59
>tsubamerailstar さん、李先生ももう政界の動向よりご自分の楽しみを優先させていただきたいです。
政治家としての力量と懐は既にゆるぎないもの。今後は私人として楽しんでいただきたいのです・・・・・。
でも日本語世代の旧同胞と同じでなかなか頑固ですからね。^^;
時々南部に住む日本語世代の旧同胞からお電話があるのですが、日本人の若い方と接触したりすると、とっても嬉しいようですね。
そのたびに、こんな人が来たとか会ったとか報告くださるんです。ありがたいものですね。
Posted by: edaats
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2006年10月13日 08:55