
先月30日から日本を訪れていた台湾元総統李登輝先生は念願の奥の細道を歩かれ、6日に東京に戻られた。
昨日7日には、東京・ホテルオークラにおいて講演会と歓迎レセプションが開かれ、約1400名が出席。
私も東京にこられるのは心待ちしており、久しぶりにお会いすることができた。お話を出来たのは2004年12月(台北)以来であった。
中川昭一、西村眞悟、平沼赳夫、大江康弘、中津川博郷の各氏をはじめとする日本の政治家、桜井よし子、金美玲、大宅映子、拉致家族の会増元事務局長など数多くの日本のオピニオン・リーダーたちが出席した。
講演では冒頭、曽野綾子、三浦朱門ご夫妻とともに靖国神社を訪問したことを報告されると、会場が割れんばかりの拍手が起こった。李登輝先生は、「22歳まで日本人として生き、日本時代に兄(李登欽氏-日本名:岩里武則)を戦争で失い、兄が日本の暖かい気持ちのなかで靖国神社に眠っている。62年ぶりに兄に会えて涙が出た。本当に嬉しい。」と述べた。同行の曾文恵夫人も脇で涙ぐんでおられたそうだ。
靖国神社には250万人の軍人、軍属が祭られており内2万8000人が台湾出身者だ。もちろん台湾同胞への追悼の気持ちもあったことだろう。
講演では、60分にわたりアジアを中心とした世界情勢について語り、「アメリカが中東にかかりきりになっているため、極東において日本が中国と対峙しなければならない」と指摘した。
質疑応答では拓殖大学渡辺利夫学長が口火を切り、続く評論家の櫻井よし子氏が中国のこれまでの自己矛盾した日本への発言を挙げていることを題材に、日本が中国へどのように対応すべきか質問した。李先生は、中華民国憲法を例に取り、「領土を『固有の領域』としているが、これでは意味が分からない。チンギス・ハンはハンガリーまで行ったが、ハンガリーは中国だろうか?これが中国文化そのものが持つ問題である」とした。
また、「中国は循環を繰り返している社会であり、その循環から抜け出すことを日本が教えてあげることが平和への道である。台湾は民主化を伝えることができる」と語った。
最後に、「自分にとって、靖国参拝は政治ではなく、兄が祀られているという家族の問題。父は兄の戦死を信じず、位牌も墓も作らなかった。家ではできなかった、兄の冥福を祈るという、やるべきことを今回実現できた。人間として感謝している。」と結んだ。
歓迎レセプションでは、塩川正十郎・元財相が乾杯の挨拶で「イデオロギーではなく人情が大切である」としたうえで、「より良い日本、より良い台湾ができるように」と祝福。
乾杯では、台湾式に李登輝先生がグラスを飲み干したので、会場は盛り上がった。

余興として、李先生の母校である台北高等学校の同窓生30数名が、学生帽をかぶるなどして現れると、李先生も学生帽をかぶって壇上に上がり、一緒に校歌を歌うなど、心から喜びを分かちあえた会だった。
日本李登輝友の会・小田村四郎会長が、「今回、政府から不当な発言などの圧力がなかった。これからも交流を進めたい」という言葉で楽しい会が中締めとなった。
実に温かい講演会であり歓迎レセプションであった。
今日は日光を訪問され、明日帰国される。
ぜひまたビザなしで来日していただきたいものだ。
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資料-産経新聞6/8付記事
資料(産経新聞)-- Windows Media Player用
□李登輝氏思いを語る
□李登輝前台湾総統靖国神社を初参拝
資料(産経新聞6/10記事)-- 離日にあたっての記者会見「靖国問題は中韓が作ったもの」
--次期総統選ではどの政党を応援するか
「私は国民党の指導者として、台湾の民主化を実現した。私はこれを一生の誇りと思っている。ところが、国民党からみれば李登輝は反逆者であり、私は潔く国民党を離れた。今は全く自由な形で台湾の政治の成り行きを見ている。誰が総統になるのかは人民が決めるのであり、私が決めることではない」
--靖国参拝が日中関係にどう影響を与えるか
「いったい靖国神社問題というのは、どこから出てきたのか。まずこれを考える必要がある。私は、中国大陸やコリア(韓国と北朝鮮)において、自国内の問題を処理できないがゆえに作り上げられたものと思っている。それに対して日本の政治はあまりに弱かった。外国政府に批判される理由はない。自分の国のために亡くなった若い人を祀るのは当たり前だ。新しい道を進むべき社会を既成概念で妨げてはならない」
--安倍政権の対中姿勢をどう評価するか
「日本がアジアにおける自立的な国家となるためにも、安倍首相は真っ先に中国大陸を訪れ、胡錦濤(国家)主席と戦略的な信頼関係をつくりましょう、とやった。上等な『布石』だと思う。碁で布石がなければ『定石』は置けない。
(私が)兄の冥福を祈りに靖国に行ったところで、中国の上(指導者)の人は何も言い切らない。(中国外務省報道官が)つまらないことを騒いでいるだけだ。新聞がこの(報道官の)話を聞いて、大きく取り上げるのは間違いだ」
--台湾の帰属問題に関する見解を
「サンフランシスコ条約には、日本が台湾を誰に返還するか、一言も書いていない。台湾の主権(に関する法的位置付け)はいまなお不明瞭(めいりょう)だが、(実態としては)2300万の台湾人が主権を握っている。私は台湾は主権も自由もある独立した一つの国であるといってきた。今、(どこから)独立する必要があるのか。ただ、台湾の人民が自分の国だという認識をもっていかなければ、誰も助けてくれない」