●No.313 べんとォー

列車が驛(駅をあえて驛と書く)に着く。ホームから「べんとぉー、べんとー」という声が車内に入ってくる。乗客が窓をあけ車外に身を乗り出して手を振る。すかさず弁当屋が走り寄る。「お稲荷さん一個下さい、あっ、お茶もね」「これでお釣りちょうだい」
列車はゆっくりと動き始めた。「早く早く」の声に弁当屋の手が伸びて、釣り銭が身を乗り出した乗客の手にわたる。乗客はホッとした顔で窓を降ろす。
こんな場面は日本はもちろんのこと台湾でも見ることはなくなった。台湾南部のローカル線で廃車寸前とも思える列車に乗り、こんなシーンをふと思い出した。