●No.213 蝉の声
閑さや岩にしみ入蝉の声 (しずかさや いわにしみいる せみのこえ)。
芭蕉の句だ。句碑は確か山形の立石寺だったと記憶している。
-なんと静かに思えることよ。その鳴き声しか聞こえず、かえって静けさがつのるように感じられる蝉の声は、まるで岩々にしみこんでいるかのようだ。
おもしろいことに、蝉の声にも関わらず「閑か」なのである。騒々しい蝉の声が空気のように石の間に吸い寄せられていく、同時に別の空間に自らが置かれたようになり「閑さ」を感じ取れるような句である。
そんな空間でノンビリしたいものだ。
ちなみにドナルド・キーン訳は以下のようになっている。
"How still it is here--
Stinging into the stones,
The locusts' trill."
「--」は『間』だそうだ。